質問 1:子牛のカードとは何か.
質問 2:カード形成しないと,子牛はどうなるか.
質問 3:超音波検査でカード形成を評価する適期とプローブの操作方法について述べよ.
質問 1:子牛のカードとは何か.
質問 2:カード形成しないと,子牛はどうなるか.
質問 3:超音波検査でカード形成を評価する適期とプローブの操作方法について述べよ.
質問 1 に対する解答と解説:
子牛のカードとは,子牛が飲んだミルクが胃で固まったものである.牛には四つの胃があるが,子牛では第一胃から第三胃が未熟で,第四胃でミルクを消化する.飲んだミルクは第四胃に入り,酵素の働きでタンパク質が分解され,固体のカードと液体のホエーに分かれる.
通常の牛乳には約3%のタンパク質が含まれ,その8 割がカゼインというタンパク質で,カゼインミセルと呼ばれる球形の粒子を形成して,牛乳中に懸濁している.このカゼインミセルは1ml 中1014~1016 個含まれ,光を散乱するため,牛乳は白く見える.カゼインミセルの外側は親水性になっているため牛乳中で水和しているが,酵素の働きで親水基が遊離するため疎水性度が増し,重合が始まり凝集体となり,一塊のカードが形成される.カードはチーズの原料として知られている(写真:生乳2 リットルからできたカード)
質問 2 に対する解答と解説:
子牛が本来持っている消化機構であるカードが形成されないと,カード形成した子牛に比べて増体が悪くなる.またカード形成していない子牛で,下痢が観察されることもあり,因果関係が示唆されている.さらに初乳においては,カード形成した方が免疫グロブリンの吸収が多いことがわかっている.
カード形成しないという場合,子牛の要因と飲ませるミルクの要因を分けて考える必要がある.子牛の要因としては,胃の酵素活性が低いことや,酵素量が少ないことが考えられる.また発熱や脱水といった全身症状の影響を受ける可能性も考えられる.ミルクの要因としては,カード形成が牛乳中のカゼインが主体となるため,カゼインの割合や性状が重要になってくる.このため非加熱の生乳はカードが形成されるが,超高温法(120~130℃ 2 秒)で加熱処理された市販の牛乳ではカードは形成されない.また粉末の脱脂粉乳を主体とした粉ミルク(代用乳)では,脱脂粉乳の製造過程の加熱処理や,タンパク質に占めるカゼインの割合が影響するため,カード形成しない代用乳も多く流通していることがわかっている.このような代用乳を哺乳している子牛では,一塊のカードは形成しないが,細かい凝乳塊を形成したり,カードを形成しなくても栄養素を吸収して成長すると考えられるが詳細はわかっていない.
質問 3 に対する解答と解説:
カード形成は超音波画像診断装置を用いて,非侵襲的に評価することができる.子牛の第四胃は腹底に存在するため,立位の状態で体表から腹底にプローブを当てることで,容易に描出することができる.また哺乳後1 ~ 2 時間は第四胃が充満していて,カードも形成されているため,簡単に第四胃と隣接する肝臓を検出することができ,評価適期である.
子牛の腹底は,できればバリカンなどで毛を除去しておいた方が,鮮明な画像が得られる.難しい場合は,油などで毛を寝かして,プローブと体表に空気が入らないようにしておくとよい.そのうえで,胸骨剣状突起を触診にて探し出し,プローブを正中線に垂直にあて,正中線に沿って走査し,第四胃を検出する(図1).第四胃やカードと思われる画像が得られたら,壁に第四胃ヒダがみられることと,右側に肝臓が隣接することを確認する.第四胃の横断像の撮影方法は,第四胃全体を観察してから,第四胃が最大に見える位置を特定し,プローブを左の第一胃側と右の肝臓側に走査し(図2),2 ~ 3 枚の静止画像に分けて撮影し,画像を結合する(図3 横断像).次に,同じ位置でプローブを正中線に平行に置き,頭側と尾側に走査し,縦方向の第四胃を2~ 3 枚の静止画像に分けて撮影し,画像を結合する(図3 縦断像).カード形成は,超音波画像の第四胃内にエコージェニックな塊と,エコーフリーなホエーが存在するかどうかで判断する.周波数は5MHz だと鮮明な画像を充分な深度で撮影することができる.複数枚の画像を合わせて画像を再構成する場合は,リニアプローブの方が適しているが,コンベックスプローブでも第四胃及びカードの有無は評価できる.以上のように,全体像を撮影できれば,エコーのスケールガイドを元に楕円体の体積として,第四胃の体積やカードの大きさも推定できる.図3 の画像では,半軸を6,4,10cm とすると約1lの第四胃内容であることが推定できる.
キーワード:子牛,哺乳,第四胃,カード,超音波検査