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獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編

獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編(日本獣医師会雑誌 第72巻(平成31年)第3号掲載)

質問 1:わが国の BSE(牛海綿状脳症)とその対策について正しいものはどれか.

  • a.わが国の食肉検査における BSE スクリーニング検査は,現在 48 カ月齢以上のすべての牛に対して行われている.
  • b.わが国では 2009 年以降 BSE の発生がないため,現在食肉検査における特定危険部位の除去は行っていない.
  • c.肉骨粉の使用を禁止する飼料規制は,「家畜伝染病予防法」と「牛海綿状脳症特別措置法」によって定められている.
  • d.わが国は,国際獣疫事務局(OIE)によって「無視できる BSE リスク」の国に認定されている.

質問 2:次のうち,飲食店または販売店が行ってもよいのはどれか.

  • a.衛生的に切り出された牛肉の塊を密封された容器に入れて湯煎し,表面から 10mm の部位が 50℃で1 分間加熱されるように調理して,内部の火の通っていない部分を提供した.
  • b.牛の肝臓を「加熱用であること」「調理の際に中心部まで加熱する必要があること」「食中毒の危険性があるため生で食べられないこと」を提示し,生のまま販売した.
  • c.牛の肝臓を,表面から 15mm の部位が 65℃で 3分間保持されるように加熱し,その内部の火の通っていない部分を提供した.
  • d.豚肉の塊を湯煎し,表面から 10mm の部位が70℃で 2 分間以上加熱されるように調理して,内部の火の通っていない部分を提供した.

質問 3:次の食肉及び食鳥肉の衛生に関する文のうち,妥当なものはどれか.

  • a.と畜場法が対象とするのは,牛,馬,豚,山羊,めん羊,鹿の 6 種である.
  • b.と畜場におけると畜検査は,解体前検査,解体後検査,精密検査の 3 つの段階からなる.
  • c.食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(食鳥処理法)が対象とするのは,鶏,アヒル,ウズラの 3 種である.
  • d.処理数が年間 30 万羽以下の食鳥処理場では,獣医師ではないものが食鳥検査をする場合がある.
解答と解説

質問 1 に対する解答と解説
正解:d

a.×
食肉検査におけるスクリーニング検査は,現在健康牛に関しては廃止されている.わが国では,2001 年 10 月から全頭検査が行われるようになったが,2006 年 5 月に 21 カ月齢以上,2013 年 2 月に 30 カ月齢以上,2013 年 7 月に48カ月齢以上の牛にのみ行われるように変更され,さらに 2017 年 4 月からは健康牛の BSE 検査は廃止された.24 カ月齢以上の牛のうち,生体検査において神経症状が疑われるもの及び全身症状を呈するものについては引き続き実施されている.

b.×
現在も特定危険部位として,全月齢の牛の扁桃と回腸遠位部及び 30 カ月齢以上の牛の頭部,脊髄,脊柱を除去しなければならない.ただし,頭部のうち,舌,頬肉,皮は食用可である.

c.×
肉骨粉の使用を禁止する飼料規制は,「飼料の安全性確保及び品質の改善に関する法律」と「牛海綿状脳症特別措置法」によって定められている.

d.◯
過去 11 年以内に自国内で生まれた牛で BSE の発生がないこと(日本の BSE 感染牛のうち,最後に生まれた牛は,平成 14 年 1 月 13 日生まれで,平成 25 年 1 月 14 日に 11 年が経過),有効な飼料規制が 8 年以上実施されていること(平成 13 年10 月の飼料規制開始から起算して平成 21 年 10月に 8 年が経過した)などの条件を満たし,平成25 年 5 月に OIE による「無視できる BSE リスク」の国に認定された.


質問 2 に対する解答と解説
正解:b

a.×
生食用の牛肉の規格基準の一つに「肉塊の表面から深さ 1cm 以上の部分までを 60℃で 2 分間以上加熱する方法またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌」することが含まれている.

b.○
消費者が牛の肝臓を中心部まで十分に加熱して食べるよう,「加熱用であること」「調理の際に中心部まで加熱する必要があること」「食中毒の危険性があるため生では食べられないこと」等の情報提供を,掲示等により行うことが求められている.

c.×
牛の肝臓を原料として食品を調理する場合は,中心部の温度が63℃・30分間以上,または75℃・1 分間以上など肝臓の中心部まで十分に加熱しなければならない.

d.×
豚肉を生食用として提供することは禁止されている.豚の食肉の中心部の温度を 63℃で 30 分間以上加熱するか,またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない.


質問 3 に対する解答と解説
正解:d

a.×
と畜場法が対象とするのは,牛,馬,豚,山羊,めん羊の 5 種である.

b.×
と畜場におけると畜検査は,と畜前検査,解体前検査,解体後検査の 3 つの段階からなる.

c.×
食鳥処理法が対象とするのは,鶏,アヒル,七面鳥の 3 種である.

d.◯
処理数が年間 30 万羽以下の食鳥処理場(認定小規模食鳥処理場)では,各自治体の知事が認定した食鳥処理衛生管理者が検査を行う.食鳥処理衛生管理者には,獣医師以外にも所定の条件を満たすものがなることができる.


キーワード:食鳥検査,と畜検査,生食用食肉,BSE