獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編(日本獣医師会雑誌 第73巻(令和2年)第7号掲載)
質問 1:営利目的ではない犬の譲渡会を開催するため,犬 10 頭以上を保管する場合は,主催者は所在地の都道府県知事または政令指定都市等の長への届出が必要です.届出は何という法律を根拠にしているか,次のうちから選びなさい.
- a.狂犬病予防法
- b.家畜伝染病予防法
- c.獣医師法
- d.動物の愛護及び管理に関する法律
質問 2:ペットとしてあひる 1 羽を飼育している.毎年2 月 1 日現在の飼育羽数等を,6 月 15 日までに最寄りの家畜保健衛生所へ報告しなければならない.その根拠となる法律を次のうちから選びなさい.
- a.家畜伝染病予防法
- b.化製場等に関する法律
- c.動物の愛護及び管理に関する法律
- d.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
質問 3:保健所に従事する公務員獣医師は環境衛生監視員の任を担って業務を実施することもある.環境衛生監視員が遂行する業務の根拠となる法律を次のうちから 2 つ選びなさい.
- a.公害対策基本法
- b.水質汚濁防止法
- c.クリーニング業法
- d.旅館業法
質問 4:食品表示法により,令和 2 年 4 月から全ての食品が新しい表示となった.食品表示法はどの官庁が所管しているか,次のうちから選びなさい.
- a.食品安全委員会
- b.消費者庁
- c.厚生労働省
- d.農林水産省
解答と解説
質問1に対する解答と解説:
正解:d
動物の愛護及び管理に関する法律の第二種動物取扱業に該当するので,所在地の都道府県知事または政令指定都市等の長への届出が必要となる.第二種動物取扱業は,営利を目的としない動物の取扱いのうち,飼養施設を設置し,一定頭数以上の動物の取扱い(譲渡し,保管,貸出し,訓練,展示)を業として行うものである.犬だけでなく,ネコやウサギ等さまざまな対象動物種,対象頭数が規定されている.対象動物種,対象頭数は環境省のホームページ「第二種動物取扱業者の規制」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/trader_c2.html)をご覧いただきたい.さらに,住宅地などで動物を飼養または収容することによって,汚物や臭いで近隣に迷惑がかからないように,地方自治体が条例を定め,飼育の場所,動物種,動物の数の制限を設けていることがある.大型動物や多くの中型・小型動物を飼育・収容する場合は,まず,地元の保健所,動物愛護管理センター等に相談をすること.
質問2に対する解答と解説:
正解:a
家畜伝染病予防法に基づく報告が必要である.牛・水牛・鹿・羊・山羊・豚(ミニブタを含む)・いのしし・馬・鶏・あひる(アイガモを含む)・うずら・きじ・だちょう・ほろほろ鳥・七面鳥を飼育している人は,飼育の目的や飼育頭羽数に関わらず報告が必要である.
質問3に対する解答と解説:
正解:c,d
環境衛生監視員は,理容師法,美容師法,クリーニング業法,興行場法,公衆浴場法,旅館業法,化製場等に関する法律,墓地・埋葬等に関する法律,建築物における衛生的環境の確保に関する法律等に基づき,監視指導業務を行う人で,国家公務員から厚生労働大臣が,地方公務員からその地方自治体の首長が任命する.これらを実施する施設は,不特定多数の人が出入りし,利用するため,感染症の伝播の温床となりやすいことから,環境衛生監視員が監視指導を実施している.公務員獣医師はこれらの業務を担当することもある.なお,墓地・埋葬等に関する法律は人を対象としているため,愛玩動物(ペット)等の焼却,埋却,ペット霊園に関する事項は含まれない.
質問4に対する解答と解説:
正解:b
食品表示法は消費者庁が所管している.食品表示法は「食品衛生法」「日本農林規格等に関する法律:JAS 法」「健康増進法」の三つの法律の表示部分を一つにした法律で,平成 27(2015)年 4 月に施行された.生鮮食品は 1 年半,加工食品と添加物は 5年間の猶予期間があり,令和 2(2020)年 4 月からは完全施行となった.多くの加工食品は栄養成分表示(熱量,たんぱく質,脂質,炭水化物,食塩相当量等),原料の原産地表示が義務化された.アレルギー事例が多く,加工食品に表示しなければならない特定原材料(卵,乳,小麦,落花生,えび,そば,かに)は,理解しやすい表示に変更された.なお,表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」は 21 品目(あわび,いか,いくら,オレンジ,カシューナッツ,キウイフルーツ,牛肉,くるみ,ごま,さけ,さば,大豆,鶏肉,バナナ,豚肉,まつたけ,もも,やまいも,りんご,ゼラチン,アーモンド)あり,アーモンドは令和元年に追加された.
キーワード:動物の愛護及び管理に関する法律,家畜伝染病予防法,環境衛生監視員,食品表示法,特定原材料