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獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編

獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編(日本獣医師会雑誌 第77巻(令和6年)第7号掲載)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)は,感染症の発生を予防し,及びそのまん延の防止を図り,もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的として制定されている.感染症法では,動物に由来する感染症の発生及びまん延を防止するために獣医師等の責務や動物の輸入に関する措置が定められており,また,生物テロの未然防止や事故等による人為的感染に対処するために特定の病原体等に対して管理規制を行っている.今回はこれらの規定等について取り上げる.


質問1:感染症法に基づき獣医師が届出を行わなければならない感染症と対象となる動物の組み合わせはどれか.

  • a.オウム病 ─ 鳥類
  • b.エボラ出血熱 ─ サル
  • c.ペスト ─ プレーリードッグ
  • d.野兎病 ─ ウサギ
  • e.腎症候性出血熱 ─ 齧歯類

1.a,b  2.b,c  3.c,d  4.c,e  5.d,e


質問2:感染症法において,日本への輸入が禁止されている動物はどれか.

  • a.ウサギ
  • b.セキセイインコ
  • c.コウモリ
  • d.スカンク
  • e.ヤワゲネズミ

1.a,b  2.b,c  3.c,d  4.c,e  5.d,e


質問3:感染症法において,試験研究等の目的で厚生労働大臣の許可を受けた場合のみ所持等が認められている二種病原体等はどれか.

  • a.ラッサウイルス
  • b.狂犬病ウイルス
  • c.炭疽菌
  • d.ボツリヌス菌
  • e.新型コロナウイルス

1.a,b  2.b,c  3.c,d  4.c,e  5.d,e


解答と解説

質問1に対する解答と解説:
正解:2
解説:サル等の動物を感染源とするエボラ出血熱等の国外からの侵入の脅威に的確に対応し,これら感染症の被害を未然に防止するため,感染症法第13 条において,獣医師は法令で定められた感染症にかかっている動物またはかかっている疑いがある動物を診断したときは,最寄りの保健所長に届け出ることが義務づけられている.届出を行わなければならない感染症と対象となる動物は表のとおり.


質問2に対する解答と解説:
正解:4
解説:国内における輸入動物を起因とする人の感染症の発生を防止するために,感染症法において感染源となる動物の種類に応じて,輸入禁止(第54 条),輸入検疫(第55 条)及び輸入届出(第56 条の2)の措置が規定されている.2024 年6 月現在,動物由来感染症を人に感染させるおそれが高いものとして輸入が禁止されている動物は,イタチアナグマ,コウモリ,サル,タヌキ,ハクビシン,プレーリードッグ及びヤワゲネズミが定められている.(ただし,サルについては試験研究または展示用として輸入可能地域から輸入する場合,証明書の添付や輸入検疫等,一定の手続きを経て輸入することが可能)


質問3に対する解答と解説:
正解:3
解説:感染症法では,生物テロや事故等による感染症が発生及びまん延し,国民の生命及び健康に影響を及ぼす危険性を踏まえて,病原体等を一種から四種までに分類し,所持,輸入等の禁止,許可,届出,基準の遵守等の規制が設けられている(図参照).


キーワード:感染症法,人獣共通感染症,病原体管理規制