獣医師生涯研修事業Q&A 公衆衛生編(日本獣医師会雑誌 第78巻(令和7年)第11号掲載)
質問1:HACCP に関する以下の記述について,正しいものはどれか.
- a.HACCP は,8 原則13 手順からなる衛生管理手法である.
- b.HACCP の原則には,「危害の分析」「重要管理点の設定」「記録の保存」についての要素が含まれている.
- c.HACCP は,給食施設や飲食店などの小規模な事業者には適用されない.
- d.HACCP の導入には,最低でも3 年以上の訓練と資格取得が必要である.
- e.HACCP は,最終製品の検査結果のみに基づく衛生管理手法である.
質問2:食品に関する以下の記述について,正しいものはどれか.
- a.保健機能食品は,医薬品と同じ効能・効果を謳うことができる.
- b.保健機能食品は「栄養機能食品」「機能性表示食品」「特定保健用食品」の三つに分類されている.
- c.特定保健用食品は,企業からの届出により登録をすることができる.
- d.機能性表示食品は,事前に厚生労働省の認可を必要とする.
- e.機能性表示食品は,2000 年から制度化された.
質問3:薬剤耐性菌に関する以下の記述について,正しいものはどれか.
- a.薬剤耐性菌は,抗菌薬を投与しなかった場合でも自然に発生し,人の影響がなくても国際的に拡散する.
- b.薬剤耐性菌の拡散は,適切な抗菌薬の使用や感染管理対策によって防ぐことができる.
- c.抗菌薬は要指示医薬品ではない.
- d.動物における薬剤耐性菌の問題は,人の医療における問題とは関係なく,獣医学の範囲だけに限定される.
- e.ディスク拡散法による感受性試験により,最小発育阻止濃度を決定できる.
解答と解説
質問1に対する解答と解説:
正解:b
- a.7 原則12 手順からなる衛生管理手法である.
- b.HACCP の7 原則は,危害要因の分析,重要管理点の決定,管理基準の設定,モニタリング方法の設定,改善措置の設定,検証方法の設定,記録の保持の7 つからなる.
- c.2021 年6 月より,食品を扱う全ての事業者に対してHACCP に沿った衛生管理が完全義務化された.
- d.最低訓練期間や資格要件は存在しない.HACCPの導入には,訓練を受けた担当者や専門家の指導を受けることが望ましいが,具体的な資格要件は定められていない.
- e.最終製品の検査結果だけではなく,食品の各製造工程の中で危害を事前に分析し,その危害が発生しないように重要管理点を設定し,継続的に監視・管理する予防的管理手法である.
質問2に対する解答と解説:
正解:b
- a.保健機能食品はあくまで食品であり,医薬品のような「疾病の治療・予防」を目的とした効能・効果を表示することはできない.
- b.正解.
- c.特定保健用食品は,消費者庁による審査と許可を経て販売される.
- d.機能性表示食品は,消費者庁への「届出制」であり,事前の認可は不要である.
- e.機能性表示食品は,2015 年4 月から制度化された.
質問3に対する解答と解説:
正解:c
- a.薬剤耐性は自然界でも発生しうるが,その拡散・選択は主に抗菌薬の使用によって促進される.
- b.正解.
- c.動物で承認された抗菌薬は水産用を除いて,要指示医薬品に分類される.そのため,医薬品医療機器法に基づき,獣医師の診察に基づく指示を受けたもの以外への動物用抗菌性物質製剤の販売を禁止している.
- d.One Health(人・動物・環境の健康は相互に関係している)の視点から,動物由来の薬剤耐性菌が人に感染することが懸念されている.
- e.ディスク拡散法は,感受性の有無のスクリーニングに有効だが,最小発育阻止濃度(MIC)としての正確な値を測定することはできない.MICの測定には,寒天平板希釈法や微量液体希釈法などの試験を実施することが必要となる.
キーワード:HACCP,保健機能食品,機能性表示食品,特定保健用食品,薬剤耐性菌