オホーツク農業共済組合
- 出身大学:
- 麻布大学
- 卒業年次:
- 平成17年(2005年)
- 現在の所属:
- オホーツク農業共済組合
卒業後現在までの略歴
- 平成17年
- 斜網NOSAI女満別家畜診療所入社
- 平成26年
- 北見家畜診療所へ異動
産業動物獣医師を目指した理由を教えてください。
学生の頃は野生動物にも関心があったのですが、「経済活動に深く関わる仕事がしたい」という思いが徐々に強くなり、日本の畜産を農家の方と一緒に創っていける産業動物獣医師になりたいと考えるようになりました。私が学生の頃はまだ女性の産業動物獣医師が少なく、「この仕事は女性には無理だよ」などと言われることもありました。でも、実習で農家の方と一緒に仕事をしてみると「無理」どころか楽しくて楽しくて……(笑)。実際に立派に働かれている女性の先輩方もいらっしゃいましたので、この仕事をやろうと心に決めました。
仕事の中で大切にしていることを教えてください。
私は現在牛・馬・豚の診療を手がけています。大事にしていることは、やはり農家さんとのつながりです。農家にとって家畜はとても大切な存在ですから、信頼できない獣医師には診療を任せたくないもの。やはり、初めてお会いしてすぐに全幅の信頼を得るのは難しいと感じます。私の場合転勤で別の土地に移ることもあるので、いかに一から農家さんとの信頼を築いていくかが仕事の重要なポイントになっていると思います。「この人になら家畜を任せても大丈夫だ」と思っていただけるまで、時間をかけて少しずつ互いの理解を深めていく。そうするとやがてこちらの提案も受けて入れていただけるようになり、診療もスムーズに行うことができるわけです。もっとも、人間同士との信頼構築が重要なのは、どの業種でも同じことかもしれませんが。
これまでのお仕事の中で、特に印象に残っている出来事があれば教えてください。
黒毛和牛の子牛は下痢になりやすく、それが生死にかかわる重体につながることも珍しくありません。そしてもちろん、子牛が生き残れるか否かは農家さんの経済活動に大きく影響します。そのため、私たち獣医師にとって「下痢の子牛をいかに生存させるか」は非常に重要な役目のひとつ。といっても、子牛を救うための特別な方法があるわけではなく、基本的に獣医師にできるのは「毎日こまめに往診して、検査と点滴を続けること」だけ。新人の頃から私はとにかく助かるかもしれない子牛を見捨てるのが嫌で、がむしゃらに治療を続けるタイプでした。時には周囲から「もうあの子牛はあきらめたほうがいいよ」と言われることもありましたが、それでも、頑張った分だけの成果は必ず出るものです。死にかけていた子牛が回復したときには農家さんからも「ありがとう」と言っていただけましたし、そうした地道な仕事の積み重ねが、農家さんとの信頼を深めることになったのではないか、と思っています。
妊娠中の仕事で苦労されたことはありますか?
私は現在7歳の女の子と4歳の男の子がいるのですが、ありがたいことに私の職場では産休も育休もスムーズに取得することができました。妊娠中の勤務についても、「無理をしない程度に、自分のやりたい仕事をしなさい」という自由な方針だったので、おなかが大きくなるまでは普段通りに外勤の診療を続けていました。さすがに出産が近づいてからは内勤の事務を任せてもらったのですが、むしろ内勤のほうがつらかったですね(笑)。
仕事と育児の両立において、どのような点に苦労されていますか?
私が夜勤がある時も、夫が子供の面倒を見てくれるので、夜勤が無く、家事と育児をこなせる夫のおかげで仕事と家庭の両立ができています。
育児をしながら、仕事を続けてよかったと思われますか?
よかったと思います!育児休暇中は仕事から離れて育児に集中していたのですが、社会と接点を持たず家にこもっているのはつらかったです。私にとっては、専業主婦よりもむしろ働きながら育児をするほうがラクと言っても過言ではありません。それに、子育てをすることが仕事にプラスに働いていることもあります。子どもがいなかった頃はけっこうマイペースに仕事をしている部分もあったのですが、今は子どものお迎えや家事のため定時に帰る必要があります。ダラダラ仕事をしていると間に合わないので、自ずと仕事の優先順位をしっかり考えるようになった結果、前よりもずっと効率的に仕事ができるようになりました。
今後の目標を教えてください。
性別に関係なく、あらゆる人が働きながら育児に参加できる社会にしていければいいな、と思います。私の職場では女性が育児・仕事を両立できる環境は整いつつありますが、まだまだ育児を積極的に行う男性は少ないと感じています。職場の、子どもがいる若い男性にはよく「もっと育児をしなさい」と言ったりしています(笑)。