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産業動物獣医師は、原則一人で農家を訪問し、
自分の手ですべて仕事が完結できる仕事。
行動的・自主的に働ける環境に惹かれて、産業動物獣医師になりました。

オホーツク農業共済組合 北見家畜診療所

出身大学:
酪農学園大学
卒業年次:
平成17年(2005年)
現在の所属:
オホーツク農業共済組合 北見家畜診療所

卒業後現在までの略歴

平成17年
北見家畜診療所(現職)

産業動物獣医師を志した理由を教えてください。

もともと私は野生動物の診療に興味があって獣医を志したのですが、現実的な就職先を考えたとき候補に残ったのは、小動物か産業動物いずれかの臨床でした。どちらが自分に向いているのかを知るため、大学時代にはいずれの実習も受けてみたところ、産業動物獣医の仕事のほうが肌に合っていると感じたのです。小動物を診る獣医師の場合、基本的に往診がないので同じ病院の中で検査や治療をするというスタイル。一方、産業動物獣医の場合は、原則一人で診療車に乗って農家を訪問し、自分の手ですべて仕事を完結することができます。そのように行動的・自主的に働ける環境に惹かれ、産業動物獣医師になりました。

仕事においてポリシーとされていることなどはありますか?

現在私は産業動物獣医師として主に、乳牛、肉牛、豚、馬等の一般診療や、繁殖関連の仕事(妊娠鑑定、出産等)に従事しています。ポリシーといえるかどうかわかりませんが、私が仕事をする中で気をつけているのは「動物たちの身になって診療をする」ということ。特に私自身子どもを産んでからは、経産牛の気持ちに沿った治療を意識して行うようになりました。たとえば分娩時の大変さは、子どもを産んだ人にしかわからないもの。どうやって子牛を引っ張れば親牛が楽になるか、といったことがわかるようになりました。産後のケアも同様です。乳腺炎になったときの気持ちなどまで想像でき、きめこまやかな配慮ができるようになったように思います。

仕事と育児の両立は大変だったと思いますが、仕事を辞めたいと思ったことはありますか?

私は現在2歳の男の子と6歳の女の子がいるのですが、やはり産業動物獣医師の仕事と育児を両立するのはなかなか大変です。毎日なるべく夕方5時には職場を出ようとしているのですが、どうしても急な手術があったりするとそれに対応しなければいけません。急いで子どもを迎えに行き、帰宅してからご飯を作ってお風呂に入れて寝かしつけて……と、仕事が終わった後の家事もかなりハードです。元気なときは頑張れるのですが、少し体調を崩していたりすると、「このままやっていくのは難しいかも」などと考えてしまう瞬間もやはりありました。

仕事や育児が大変なとき、何が心の拠り所となっているのでしょうか?

ひとつは、家事を手伝ってくれる夫の存在です。夫も同じ職場で獣医師をしているので私の仕事に理解を示してくれていますし、家事も折半でしてくれます。彼の支えがなければ、今の仕事は続けられなかったかもしれません。そしてもうひとつは、職場の仲間たち。私の職場には同じように育児経験を持つ女性が何人もいるので、困ったことがあれば何でも気軽に相談することができます。私が悩みを話すと、「ああ、私もそういう時期があったよ」などとアドバイスをしてくれるので、「悩んでいるのは自分だけじゃなかったんだな」と気が楽になります。

今後の目標があれば教えてください。

今はまだまだ子育てが手いっぱいで、家に帰ってから仕事のための勉強をする時間がなかなかとれない状態です。あともう少し頑張ったら子どもも手が離れるので、改めて仕事にフルパワーで打ち込みたいですね。産業動物獣医師の役目は単に動物の診療を行うだけでなく、広い視野を持って農家の活動をサポートすることだと考えています。今後はそうした牧場経営全体を見据えた提案ができるよう、知識を深めていきたいと考えています。一方、子育てにかける時間が少なくなってしまうのも少し寂しいという思いもあるので、今は悔いが残らないよう育児も精いっぱい頑張りたいですね。

これから獣医師を目指す学生さんや、現在活躍中の女性獣医師のみなさんに伝えたいメッセージをお願いします!

私は1年の育児休業後に職場復帰していますが、それも職場の温かいご支援と協力的な夫のおかげです。先輩方が育児と仕事を両立するための道筋をつけてくださったことには本当に感謝していますが、まだ道半ばというところもあります。これから子どもを産み育てる後輩たちのためにも、よりよい環境づくりができたらと思っています。