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公衆衛生獣医師は女性の特性を活かせる仕事だと感じています。
これからも女性が活躍するチャンスは広がっていくと期待しています。

岩手県環境生活部県民くらしの安全課
(部技術参事兼県民くらしの安全課総括課長)

出身大学:
岩手大学
卒業年次:
昭和53年(1978年)
現在の所属:
岩手県環境生活部県民くらしの安全課
(部技術参事兼県民くらしの安全課総括課長)

卒業後現在までの略歴

昭和53年6月
入庁(新採用:岩手県宮古保健所)
以降、保健所、食肉衛生検査所勤務。
平成16年
環境生活企画室食の安全安心担当主任主査
平成19年
岩手県二戸保健所保健課長
平成21年
県民くらしの安全課食の安全安心課長
平成24年
岩手県食肉衛生検査所長
平成26年
県民くらしの安全課総括課長

岩手県庁へ入った経緯を教えてください。

私は大学時代から、人の健康につながる仕事がしたいと考え、公衆衛生獣医師を目指していたのですが、当時の岩手県庁は女性獣医師の採用を行っていませんでした。ところが採用予定者が国家試験に不合格だったことから公衆衛生分野で欠員が生じ、その補充試験を受けたところ採用されることに。その後現在に至るまで、岩手県庁にて様々な部署を経験しています。保健所、食肉衛生検査所、県庁環境生活企画室 食の安全安心担当主任主査等を経て、平成26年からは県民くらしの安全課の総括課長を務めています。

現在のお仕事内容を教えてください。

県民くらしの安全課は、県民の視点に立った総合窓口的な組織です。取り扱っている「安全」は幅広く、食の安全安心、動物愛護管理、生活衛生、水道、安全安心まちづくり、交通安全対策、消費生活等に関し、横断的に取り組んでいます。従来これらは別々の課で取り扱っていたのですが、県民くらしの安全課がこれらの窓口を統一することで、「県民が安心・安全に関して困っていることはなんでもこの課に相談すれば解決する」という仕組みができたわけです。私はこの課の総括課長および技術参事として、様々な分野における企画・調整を統括しています。管理職としての仕事が主な役割となりますが、公衆衛生獣医師として培ってきた専門技術・経験を活かした各種大会等の企画・運営や、講師活動なども行っています。

県民くらしの安全課の総括課長として働く中で、どのような点にやりがいを感じていますか?

県民くらしの安全課では、食品衛生に関する公開意見交換会を開催するなど、「食の安全に関するリスクコミュニケーション」を積極的に展開しています。たとえばノロウイルスをテーマに、研究者、行政関係者、消費者など各分野の代表者をパネラーとしてホールに招き、数百人の県民と共にディスカッションや情報共有を行うことで、県全体で食中毒予防への意識を高めるといった活動です。このように自分が企画したリスクコミュニケーション等に多くの県民にご参加いただき、満足度が高かったときにはやりがいを感じますね。その他、私自身が講師として招かれて食品衛生や交通安全などについて講演会を開催することもあります。そうした際、聴講者の目が輝いているのを見ると、嬉しく思いますね。講演会では堅苦しい話になってしまわないよう、受講者の目線に立ち身近な言葉を選んで話すことを大切にしています。
また、特に食の安全安心担当では食中毒事件等の緊急を要する情報が保健所から入ってきます。日頃から迅速に対応できるようにミーティング等を通じて連携に努めています。時には原点に戻って一から協議しなおすこともありますが、その結果うまくいくことも多々あります。

県庁では様々な部署を経験されていますが、中でも印象に残っているものを教えてください。

県庁では様々な部署を経験し、それぞれの分野でやりがいのある仕事ができました。たとえば食肉衛生検査所勤務時には、県内で発生した腸管出血性大腸菌O157食中毒事件の際、衛生研究所で検査応援を行い、原因究明に役立つことができました。そしてBSE発生時には、「畜産県岩手」として牛肉の安全性をアピールし風評被害を防止するという、重要なミッションを任せられることに。マスコミも巻き込んで消費者に向けて畜産農家の見学やシンポジウムを開催するなど、振興局全体、部局横断で取り組むことができたことは、今でも印象に残っています。
また、公衆衛生獣医師と家畜衛生獣医師が、年に数回合同で研修会を開催することも私が食肉衛生検査所に勤務した時に始めました。安全な食肉を消費者に提供するため、それぞれの分野の獣医師がそれぞれの取組を相互に理解しあうことで人の健康を守るという大きな役目を果たす実感がわきます。この研修会は今も継続して開催していますが、今後もずっと開催していくべきだと思っています。

東日本大震災津波後の復興に関して、どのような取り組みをされているのか教えてください。

東日本大震災津波では、本来業務(食の安全安心、動物愛護管理、放射性物質対策等)と同時に、世界中からいただいた食品や生活物資を処分することなく被災地に届ける活動に取り組み、感謝いただきました。震災で飼い主をなくした犬や猫などの動物保護も私たちの役目。保護した動物を無事新しい飼い主に譲渡できたときは、古い表現ですがわが子をお嫁さんに出すような気持ちになり、感動しました。そして岩手県の被災地では、今も水道復旧工事を進めている最中。この活動を支援するため、私たちの部署では東京都、埼玉県、三重県から派遣された職員が活躍しています。こうした全国のサポートのおかげで復興が進んでいることに、深く感謝しています。

公衆衛生獣医師をしていて、「女性でよかった」と感じることはありましたか?

公衆衛生獣医師というのは、女性の特性を活かせる仕事だと思います。女性は相手に柔らかい印象を与えやすいものですし、一般にコミュニケーション能力に長けていると言われています。業務の中では関係各所と連携したり、県民の方と接する機会も多いのですが、女性だからこそうまくできた部分もあるのではないかな、と思います。

これから獣医師を目指す学生さんや、現在活躍中の女性獣医師のみなさんに伝えたいメッセージをお願いします!

私が入庁した頃から時代は進み、公衆衛生獣医師の4割強、県全体では約35パーセントが女性で、その活躍は素晴らしいものがあります。
また、子どもを育てる環境などもどんどん整備されてその活躍はこれからも広がっていくと思います。女性が働きやすい職場は、男性も働きやすく、その結果社会は成長していくという言葉を、いま、実感しています。男性獣医師と女性獣医師は対等に仕事をしていくことがそもそも基本ですが、その分、女性獣医師はその世界を広げるチャンスはたくさんあると思います。皆さんに期待しています。もちろん私も皆さんの活躍に関わっていきたいと思います。